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言葉なんて

田村隆一氏の「帰途」という詩がある。高校の教科書に載っていて習ったのだが、どんな内容の授業だったのかまったく思い出せない。

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる
                   田村隆一「帰途」より
あらためて詩を読んでみると、「ぼく」「あなた」「きみ」の関係はどのようになっているのかとか、「帰途」とはどこへどんなふうにかえってゆくことなのかなどが、とても気になる。

そのころはただ、「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」ということばだけが、印象に残った。「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」という強い響きと、そのことをまさに言葉によって表現していることの引き裂かれた感じにひきつけられた。

「言葉として発しなければよかった」と思うことはあっても、「言葉をおぼえなければよかった」と思ったことはない。むしろ、言葉がもっと豊富だったら、いろんなことをもう少しましに表せるのかもしれないと思う。それは幻想にすぎないかもしれないが。
by chinchudo | 2006-06-15 14:40 | ●日記
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