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石原千秋氏「入試国語のルールを暴く」

(中学入試に物語が採用されることについての言説)
評論を解くのに抽象的な思考が要求されることは言うまでもない。…だが、評論を読み設問を解く行為は抽象的な思考の内部で行われるにすぎない。評論の言葉と解答の言葉との間には、本質的な違いがないのである。
 一方、物語の場合は、現実らしくみせた表現を(入試に出題されるのはほとんどがリアリズム小説だ)抽象的な言葉に「翻訳」しなければ解答が出来ないのだ。物語の言葉と解答の言葉との間に、本質的な違いがあるからである。つまり、抽象化する能力が試される。このことは詩の解釈を考えてみればよく分かる。詩を解釈することは、一般的にはもう一つ別の詩を書いて見せることではない。詩の世界を抽象化することは、言語によって構築されたイメージを、生と死、光と闇、文化と自然といった二元論的な思考の枠組みによって自分の所属している世界のどこかに位置づけることである。つまり、抽象化とは世界の全体像を手に入れることなのである。その時、世界の中で自分の立っている位置が見えてくる。それは「自分とは何者か」という問いに答えることだといえる。したがって、抽象化する行為は、アイデンティティーの問題をも引き寄せる。
(斎藤美奈子編 『21世紀文学の創造 4 脱文学と超文学』 収録 2002年 岩波書店)
石原氏の文章を読むと、国語の物語文の設問を解くことがなぜ難しいかが理解できます。特に、選択肢問題を解くのに消去法をつかわないと正解が正解と説明できないときがある理由がよくわかります。

(さて、夏休み。塾の講習がんばりましょ。国語恐るべし。奥が深いです。)
by chinchudo | 2006-07-19 22:33 | ●書籍紹介
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